不当な乗っ取りに対し,支配権を取り戻した事例

【相談前】

 

別の弁護士が受任していた事件を引き継いだものです。

 

ご依頼者はもともと別会社の経営者でしたが,問題の会社の経営難の際に請われて取締役に入った方でした。

会社再建のために入社するにあたり,創業者からは発行済み株式の過半数を譲り受けていましたが,ある程度会社の再建ができたところで,後進に会社を任せるようにしたいと考え,自身は代表を退きました。

数年がたったころ自分宛てに届いた株主総会招集通知をみると,そこに記載された株式数は本来保有しているはずの株の10分の1になっていました。

 

経過を調べると,どうも現取締役の一部が株式譲渡契約書を偽造するなどして,創業者から相談者の方への株式譲渡自体をなかったことにしたようであり,裁判を起こすことになりました。

 

 

【相談後】

 

ご依頼者は当初,別の弁護士に依頼していましたが,会社法に詳しくなく1年半ほど訴訟をしてきたものの,私を訪ねてこられた際にはかなり劣勢の状況でした。

そこで,セカンドオピニオンをもらいたいということで相談に来られましたが,記録を精査しますと,原告・被告の代理人のいずれもが,株券に関する重要な論点の見落としをしていることがわかりました(株券発行会社でありながら,譲渡に当たって株券の交付をしておらず,会社法の規定により株式譲渡が無効になる,というものです)。

 

その後,私が訴訟を引き継ぎ,訴訟終盤ではありましたが当該論点を指摘するとともに,これに基づく新たな主張を展開したところ,形勢が逆転し,当方に有利な形で支配権を取り戻すことができました。

 

 

 

【弁護士からのコメント】

 

会社法には会社の運営を規制する強行規定(※当事者の合意で変更できない規制)がありますが,それらの中には中小零細企業において必ずしも順守されていない規定が複数あります。

こうした運用は違法とはいえ,争いが表面化していない段階ではあまり問題となりません。しかし,ひとたび紛争が生じた際には,思わぬ形で足元をすくわれることがあります。

今回の訴訟では,こちらが被告側の不備を突いて足元を掬った形になりますが,逆の立場の代理人となって支配権を取られそうになった経験もあります。

 

こうした事態を避けるためには,日ごろから弁護士のチェックを入れて会社運営に問題がないかチェックしておく必要があります。

 

単発でのご依頼でも一定のチェックはできますが,できれば顧問契約を締結していただき,日常的に弁護士の目を入れておくことが望ましいと言えます。