【相談前】
相談者様が施工会社として5階建てビルを建築し、施主に引き渡しました。引渡の1ヵ月後が代金の支払期限でしたが、瑕疵の疑いがあるといった主張をされて、引渡後の支払を拒否されていました。ご相談者様と施主の弁護士とでやり取りをされましたが、交渉が進展しなかったため、私にご依頼を頂きました。
【相談後】
瑕疵担保責任は瑕疵の「疑い」があるという程度で発生するものではありません。具体的に瑕疵があり、それが原因で何らかの不具合がある場合に請求できる権利です。本件では、瑕疵自体は何ら発生しておらず施主の主張に理由がないことは明らかでしたので、直ちに裁判を起こしました。施主側はさまざまな瑕疵の疑いを主張しましたが、それらについては瑕疵は認められませんでした。もっとも、施主が瑕疵の疑いがある、と主張した箇所とは別に雨漏りが生じたため直ちに補修を指示し、被告の瑕疵の主張を封じて最終的には勝訴的な和解となりました。
【コメント】
施主側の弁護士は建築事件にあまり精通しておらず、瑕疵についてもいい加減な主張が多かったため、当初はすぐに判決が得られるものと見越していました。
しかし、途中で予想外の雨漏りが発生し、形勢が逆転しかけました。
こうした場合、雨漏りの原因についての立証責任は瑕疵を主張する側(つまり施主側)にあるとされていますので、施工側は立証がなされるまでは対応しないで放置することもできます。
しかし、雨漏りについては、雨が漏るような設計をするはずがありませんから、基本的には施工の瑕疵の場合が多いです。
施主の立証責任だからと突き放して、訴訟を追行することもできますが、施主が雨漏りの瑕疵の立証に成功した場合には裁判所の心証も悪くなりますし、なにより施主側の主張する損害額や修補の主張が通りやすくなります。
施工者は雨漏り対応の技術もあり、自社で対応した方が安く上がりますので、速やかに補修して対応することにしました。
こうした速やかな対応は、依頼者のためだけでなく、雨漏り被害が生じている紛争の相手方にとってもありがたいものです。紛争中の対立当事者の間であっても、和解をするための心理的な下地となります。
最終的に双方納得の上で、ほぼ満額の和解を得る形で終結しましたので良い解決ができたと思っています。