1 離婚事件の進行
離婚事件では、離婚訴訟を提起する前に必ず調停を申立てる必要があります。したがって、事件の進行としては、離婚の交渉 ⇒ 調停 ⇒ 訴訟の順で進みます。
2 別居をお考えの方へ
事前に弁護士に相談してから別居されることをお勧めいたします。
別居をお考えになる場面では,どうしても苦しい婚姻生活から逃避したい,という思いが先にたち、別居後の生活費やその後の訴訟の展開について見通しが甘くなってしまう事が多いですし、離婚理由がない状況での別居には正当性がないとして不利になる場合もあるためです。
また、別居をした後は、様々な証拠の確保が難しくなります。
たとえば、離婚の際には財産分与が問題となりますが、別居前にきちんと財産関係の証拠(通帳、保険証書、株式口座の履歴、家庭内に保管されている現金等)を確保しておかなければ、別居後に財産を隠匿されて分与が認められなくなることがあります。
そのほか、不貞、暴力、親権者としての不適格性を裏付ける証拠なども、別居して自宅を離れてしまうと揃えるのが難しくなるケースが多いです。
別居前に必要な証拠類を確保しておくことが重要です。
しかし、相手の暴力や精神的ないじめがある場合は、身を守るために早急に別居せざるをえないケースもあり得ます。そうした場合でも、別居後できるだけ早く弁護士に相談し、アドバイスを受けてください。
3 別居の際の子供の連れ出しについて
別居の際に子供を連れて出るかどうかは非常に大きな問題です。
国際的には,子供は長年暮らしていた住居で生活を続け,親権・監護権が決定した段階で親権者・監護権者に引き渡すべきとされています。
これは,子供にとっては,両親の不仲な状況自体が大きなストレスであるのに,さらに暮らしなれた環境から引き離されることは子供に非常に大きなダメージを与えると考えられているためです。
こうした背景から,いわゆるハーグ条約においては,国境を越えた子の移動は,原則として子の利益に反すると考え,裁判の決着がつくまでは,子を移動前の国に戻すべきことを定めています。
しかし,わが国の国内における子の連れ出しについては,残念ながら異なる取扱いがなされています。
別居時に子供を連れ出したとしても,それが暴力的であるなど違法な態様によるものでなく,かつ,連れ出された先での監護状態が子にとって特段不利益なものでなく一応安定していれば,連れ出した親が監護するという結論になることが非常に多いです。
そして,離婚訴訟などで争っている間に,連れ出した側の親は監護実績を積み上げ,子供もその環境で生活していく中で,周囲とのかかわりを築いてしまうため,離婚が成立する頃には,連れ出した親が親権者と指定されてしまうことが多いのです。
このような運用のもとでは,別居開始時に子供の身柄をとったほうが監護権・親権を獲得する上で極めて有利になります。
そして,親権者双方が子供の身柄をめぐって実力行使を行うことを助長することとなり,子は非常につらい思いをすることになるのです。
個人的にはわが国のこうした運用は極めて問題があると考えますが,現実としては以上のような状況にあることを十分ご留意いただく必要があります。